策定の背景と考え方

生活困窮者自立支援法制定の背景

平成 25 12 月、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を目的とする「生活困窮者自立支援法」が成立、平成 27 4 月から施行された。同法にもとづいて、自治体が実施主体となり、自立相談支援事業、住居確保給付金の支給、就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業等が実施されている。

この「生活困窮者自立支援法」は、特に1995年に戦後最低水準を記録して以降、反転増加し続ける生活保護世帯の増加に対応するものである。日本に於ける生活保護世帯は、今や平成27年4月時点では人数では2,163,414 人、保護率で1.70 %、1,620,924 世帯と過去最高となり、特にリーマン・ショック以降の格差の拡大を象徴づけた。特に、被保護世帯のうち、高齢や傷病等以外の「その他の世帯」の増加は著しく、平成19年度には10.1%だった「その他の世帯」は、平成27年度には17.0%へと増加を見せている。

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こうした状況に対応する形で制定された「生活困窮者自立支援法」は、対象を「現在生活保護を受給していないが、生活保護に至る可能性のある者で、自立が見込まれる者」とし、社会保険を「第1のセーフティネット」、生活保護を「第3のセーフティネット」として、生活保護に陥るリスクがあり、かつ自立出来る可能性のあるものに対して、生活保護に陥る前に、あるいは生活保護を脱した後に社会復帰をはかるための「第2のセーフティネット」として1制定されたものである。

図1:厚生労働省「新たな生活困窮者支援制度の創設
(25.8.2生活困窮者自立促進支援モデル事業担当者連絡会議資料)

2016-04-14 13.34.30

こうしたセーフティネット機能の強化・補完については、従来からもハローワークと自治体が協働しての就労支援や、特に若者に対してはサポートステーション事業等によって、その支援が行われてきたが、行政の立場からは、これまで個別に実施されていた個別の生活困窮者に対する施策を一貫したものとして整備したものが「自立支援法」である。

生活困窮者自立支援法の枠組みと就労準備支援事業

自立支援法の枠組みでは、まず「自立相談支援事業」において相談を受けた生活困窮者の状況に応じてアセスメントを行い、自立生活のために必要なプランを作成する。このプランに基づいて、民間事業を含む多様な支援事業へと生活困窮者をつなげることで自立をはかることになるが、その中で、特に、今回の評価ガイドライン作成の対象となる「就労準備支援事業」は、生活困窮者の自立支援のために、一般就労に向けた日常生活自立・社会自立・就労自立のための訓練を行うものである。

「就労準備支援事業」では、就労体験等を通じた訓練、生活習慣確立のための指導や地域活動への参加等の日常・社会生活自立のための訓練を行い、日常生活の自立から社会参加、就労訓練事業へとつなげてゆくことがその目的とされている。具体的には、生活リズムが崩れている、社会との関わりに不安がある、就労意欲が低いなどの理由で、就労に向けた準備が整っていない者に対して、就労支援員がボランティア・就労体験などの場を提供することが典型的なプログラムとされている。就労準備支援事業では、就労に向けた準備としての基礎能力の形成からの支援を、計画的かつ一貫して実施することに主眼が置かれている。

就労準備支援事業では、福祉事務所設置自治体の事業として、社会福祉法人等へ委託を含め実施し、最長で半年から1年の有期の支援を実施する。内容は、生活習慣形成のための指導・訓練(日常生活自立)、就労の前段階として必要な社会的能力の習得(社会生活自立)、事業所での就労体験の場の提供や、一般雇用への就職活動に向けた技法や知識の取得等の支援(就労自立)の3段階が含まれ、事業の形式は、通所によるものや合宿によるもの等が想定されている。

就労準備支援事業に対する評価ガイドラインの必要性

こうした就労準備支援事業は、自治体の事業として、各地の状況に応じた形で行われるために、また委託先等の事業内容によっては、その実施実態にはかなりの幅があるのが実際である。こうした状況に対応するために、厚生労働省がみずほ総研に委託して作成した「自立相談支援機関における使用帳票類標準様式 」、また三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託した「生活困窮者の就労支援に関する研究事業」があり、そこにおいて標準的な実施プロセス、アセスメント・シートの雛形、●●等が記載されている。

本事業での問題意識は、こうした事業の成果をどのようにして捉えるかというところにある。生活困窮者自立支援法が、生活保護受給者数の拡大、行政による支出の増大という事象を問題意識として出発した制度であるがために、これらの制度の成果は「就労」に収斂してしまっているのが現状である。

しかしながら、実際の現場での成果に対する意識においては、単に就労だけを成果として捉えることにも違和感があるのが現状である。つまり、困窮の度合いが大きい者にとっては、生活自立、社会自立のみの成果でも、将来的な就労につながる大きな進展ともなり、また生活困窮者の就労には長期間の時間がかかることから、行政の単年度の事業の中では、必ずしも「成果」とされる就労が達成できるとは限らないからである。

そこで、本事業では、就労以外の事業成果について、可視化・定量化をはかり、評価の対象とするために、評価の枠組みとその実施要領となるガイドラインが必要であると考えた。

また、実際に実施されている事業の幅があることから、実施のプロセスについても評価の対象とし、これを支援の内容と対応する形にすることで、事業のより効果的な実施につなげることが出来るのではないかと想定した。具体的には、全国の4つの自立準備支援事業に対してヒアリングと資料提供の依頼を行い、その事業の詳細について理解を行った後に、全4回の委員会での議論をもとに、評価ガイドラインを作成したものである。

以降の章では、今回の取り組みで検討した事業の詳細と、作成したガイドラインとその活用方法について述べる。